ドメインの定義(事業ドメイン)

前回のおさらい(企業ドメイン)

前回は企業ドメインのお話をしました。
企業ドメインとは、企業全体としてどのような領域で活動するかの観点で定義したものです。

  • 将来の企業のあるべき姿や経営理念を包含している
  • 企業ドメインの決定が各事業への経営資源の配分へ影響を与える
  • ドメインは物理的定義もしくは機能的定義で考える

事業ドメイン

さて、今回は事業ドメインのお話となります。
事業ドメインは、言葉のとおり「事業」単位でのドメインの定義となり、全社レベルの企業ドメインによる将来の方向性を受けたあと、事業ドメインで差別化の基本方針が示されます。その定義には3つの要素が含まれます。

  • C:顧客層(ターゲット)
  • F(V):顧客機能(ニーズ)
  • T:技術(ノウハウ)
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エーベルの三次元定義

上記3つの要素はエーベルの3次元定義ともいわれ、どの顧客に、どのニーズに向けて、どの技術(ノウハウ)にもとづく商品・サービス等を展開するかを考えるのに役立ちます。また、事業ドメインは、適度な広がり、将来の発展方向を視野に入れる、自社の中核となる能力を規定、企業内外から共感・納得を得られること(ドメインコンセンサス)も併せて考えます。

企業ドメインとの違いは、企業ドメインが全社レベルで考え、事業ドメインは事業単位で定義することです。よって、事業が複数存在すればその事業ごとに「顧客層」、「顧客機能」、「技術」を定義することとなります。

特に「技術」の定義は、コアコンピタンス(核となる強み)やケイパビリティ(組織的な能力)を明確にするための自社分析をする機会となります。

成功事例

よく事例として挙げられる企業として、株式会社タニタ(以下「タニタ」)の事例がありますのでご紹介します。

タニタ

「タニタ食堂」などでも有名なタニタは、「体重をはかる」から「健康をはかる」、「健康をつくる」へ、物理的定義であるヘルスメーター等の製造・販売などプロダクト中心から、機能的定義である健康をトータルにサポートと再定義し、健康を意識する層に対し、強みである健康プログラムを提供することで大成功しました。

「健康をはかる」から「健康をつくる」へ。
タニタはプロダクトとサービスを通して、みなさまの「健康」をトータルにサポートします。

タニタホームページ https://www.tanita.co.jp/

現社長体制(三代目)の事業ドメインを考えてみると、

C顧客層 : 健康を意識する層
F顧客機能(ニーズ):健康になりたい、健康習慣をつくりたい
T技術(ノウハウ):体組成計、健康プログラム、タニタ食堂など

前社長体制(二代目)では複数あった事業をヘルスメーターに絞りましたが、さらに脂肪率も図れる体組成計を投入することによって、「体重をはかる」のドメインの物理的定義から「健康をはかる」の機能的定義とし、さらに現社長体制(三代目)で「健康をつくる」になり、「タニタ食堂」、「タニタ健康プログラム」、レシピ本などが登場し更なる成長路線へ進んだのです。
ちなみに、前体制(1923年~1987年)での事業ドメインは以下となり、軍需、ファッション、家電など様々なものを製造・販売しており、その結果赤字が続いていました。

C顧客層 :軍関係、一般消費者 
F顧客機能(ニーズ):軍需、生活必需品、ファッションなど
T技術(ノウハウ):シガレット・ケース、貴金属宝飾品、時計、トースター、デジタルヘルスメーターなど

上記からは「わが社はどんな会社なのか」を一言で表すのは難しいですよね。

まとめ

いかがでしたでしょうか? 企業を成長路線に乗せるためには、企業ドメイン、事業ドメインによる選択と集中が必要です。特に事業ドメインでは、具体的な顧客、ニーズ、技術を事業単位で定義することで差別化の基本方針も決定しますので、経営戦略の中でも重要です。ぜひ皆様の経営にもドメインを定義することや、必要に応じて見直し、再定義することも検討されてはいかがでしょうか?