孫子の兵法を現代経営に活かす(第二回 算多きは勝ち、算少なきは勝たず)
第一回は、経営に必要な「五事」、「七計」を説明しましたが、第二回はこれらを見極めることが事業の成否につながるということを説明します。
【第二回】 計篇(第一) 四より
算多きは勝ち、算少なきは勝たず
ー金谷治訳注 新訂 孫子よりー 夫(そ)れ未だ戦わずして廟算して勝つものは、算を得ること多ければなり。未だ戦わずして廟算して勝たざる者は、算を得ること少なければなり。算多きものは勝ち、算少なきは勝たず。 而(しか)るを況(いわん)や算なきに於いてをや。吾れ此れを以てこれを観るに、勝負見(あら)わる。
※廟算 開戦出兵に際しては、祖先の霊廟で画策し、儀式を行うのが、古代の習慣であった。
金谷治「新訂 孫子」、岩波書店、2001年1月16日、33項
上記のとおり、古代中国では霊廟(先代君主を祀った場所)で作戦会議を行い勝算の有無を事前に検討した。この中に出てくる「算」であるが一般的に使われる「数える」以外に「もくろむ」、「はかる」、「見込む」などの意味もある。本計篇では 「算」を「もくろむ」、「はかる」、「見込む」 という意味として使っており、第一回で説明した五事七計をベースに「算」を検討すれば、勝負の行方が事前に見えてくるということである。つまり現代経営においては、
五事と七計をもって事業の成否を事前に見極めることが重要である。
※現代経営での五事は、経営理念・環境・リーダー・経営システム・法であり、七計は、経営(者)理念の明確化と意義、リーダーの資質と能力、事業環境(ドメイン)、従業員のモチベーションや教育度合い、ガバナンスである。
【第一回】計篇一 参照