孫子の兵法を現代経営に活かす(第一回 五事・七計) 【2024/12/8更新】

「孫子の兵法を現代に活かす」の第一回は第一篇で重要な五事・七計を紹介します。孫子といわれている孫武は中国の春秋時代(紀元前2500年前)の戦争における戦略家です。孫子の兵法は全十三篇で約二万文字と短い兵法書ですが、その中に現代経営に活かせる要点がたくさんちりばめられています。また時代が変わっても本質は変わらないということから、多くの歴史上の人物やビジネスマンに読まれています。本投稿では孫子の兵法を紹介しながらも、経営に活かせる解釈を付け加え伝えていきたいと思います。



【第一回】 計篇(第一) 一より
一に道、二に天、三に地、四に将、五に法 【五事】
主の有道、将の有能、天地、法令、兵衆の強さ、士卒の練度、賞罰 【七計】
孫子曰く、兵とは国の大事なり、死生の地、存亡の道、察せざるべからざるなり。故にこれを経るに五事を以てし、これを校ぶるに計を以てして、其の情を索む。
一に曰く道、二に曰く天、三に曰く地、四に曰く将、五に曰く法なり。道とは、民をして上と意を同じくせしむる者なり。故にこれと死すべくこれと生くべくして、疑わざるなり。天とは、陰陽・寒暑・時制なり。地とは遠近・険易・広狭・死生なり。将とは、智・信・仁・勇・厳なり。法とは、曲制・官道・主用なり。凡そ此の五者は、将は聞かざること莫きも、これを知るものは勝ち、知らざる者は勝たず。 故にこれを校(くら)ぶるに計を以てして、其の情を索(もと)む。曰く、主 孰(いず)れか有道なる、将 孰れか有能なる、天地 孰れか得たる、法令 孰れか行わる、兵衆 孰れか強き、士卒 孰れか練いたる、賞罰 孰れか明らかなると。 吾れ此れを以て勝負を知る。
金谷治「新訂 孫氏」、岩波書店、2001年1月16日、26項

一に『道』は、孫子いわく「民をして意を上と同じくさせるもの」だといい、伊丹敬之氏は書籍、(「孫氏に経営を読む」、日本経済新聞出版社、2014年7月16日)で、あるべき姿についての理念と考え、二の『天』は気候、天候、時間、三の『地』は地形でありこれらは戦争を行うにあたり重要な条件であると考えている。また、四の『将』は戦争での指揮官であり、現代の経営に当てはめると現場の事業責任者である。そして最後の『法』は法律ではなく、組織のマネジメントのための経営システムだという。

以上から五事・七計を解釈すると、五事は理念とは経営理念、ミッション、ビジョンであり会社の存在意義、方向性を決定し、環境は事業活動に必要なドメインや経営資源、将は経営幹部や責任者、そして経営システムは事業をアシストする情報システム(IT、DXなど)や規則などで、これらは経営に必要な要素となる。つまり、現代経営において「五事」は、
一が経営理念、二、三が事業環境、四が現場のリーダー、五が法律や経営システムということである。
また、主の有道、将の有能、天地、法令、兵衆の強さ、士卒の練度、賞罰の「七計」を現代経営に当てはめると、
経営(者)理念の明確化と意義、リーダーの資質と能力、事業環境(ドメイン)、従業員のモチベーションや教育度合いである。つまり、事業が成功するためのCSF・KSF(重要成功要因)の構成要素となり、現代における経営戦略の要諦を示している。